【相続税の申告・納付期限(1)】期限はいつまで?延長はできる?

直政です。

相続税の申告や納税を行う際には、その期限が厳格に定められています。
ただ、すべての相続においてその期限を守ることができるとは限らず、中には間に合わない事態も起こり得ます。

相続税の申告・納税の期限に間に合わない場合、どのような罰則を受けることとなるのでしょうか。
また、期限後の申告・納税とならないよう、どのような対策ができるのでしょうか。

本記事から数回に渡って、相続税の申告・納付期限について解説をしていきます。

相続税の申告・納付期限は死亡日の翌日から10ヶ月以内

相続税の申告や納税をする際には、その期限が厳格に定められています。
被相続人が亡くなった日の翌日から10ヶ月以内に申告・納税をしなければなりません。

相続の対象となった人が亡くなった日のことを、「相続開始日」といいます。
具体的には死亡診断書などに死亡日として記載された日であり、また戸籍に死亡日として記載された日のことです。
相続開始日を正確に把握するためには、役場で被相続人の戸籍を取得するといいでしょう。

なお、相続税の申告・納税は、いずれも同じ日が期限とされています。
申告だけ済ませておけばいい、あるいは納税さえしておけばいいというものではないため、注意しましょう。

相続税の申告・納付期限の延長が認められる例外ケース

前述したように、相続税の申告・納税の期限は被相続人が亡くなった日の翌日から10ヶ月以内というのが原則です。

ただ、この期限とは異なる考え方をするケースもあります。
例外的な扱いではありますが、実例としては決して少なくありません。
どのようなケースがあるのか、その内容を確認していきましょう。

被相続人が亡くなったことを知らない場合

被相続人が亡くなればその時点から相続開始となりますが、相続人の中には亡くなった事実を知らない人もいます。

たとえば何年も音信不通となっている場合、亡くなったという事実を聞かされたのが半年後ということも考えられるのです。

このような場合は、亡くなった事実を知った日から10ヶ月後に、申告・納税の期限を迎えることとなります。

被相続人が亡くなった日を特定できなかった場合

被相続人が亡くなった状態で発見された場合の中には、その死因や亡くなった時期を特定できないケースが少なくありません。
一人暮らしの人が自宅で発見された場合でも、その死亡時期がはっきりしないということは考えられるのです。

この時、戸籍謄本に記載される死亡日が、「8月5日から15日までの間」というような形になる場合があります。
この場合、死亡日を特定の日にすることができないため、その期間の最終日を相続開始日とすることとされています。

二次相続が発生した場合

たとえば、父が亡くなった後、その相続税の申告期間内に配偶者が立て続けに亡くなった場合です。
この場合、本来は父の相続人である母は、父の相続税申告書を提出しなければならない立場にあります。

しかし、その期限を迎える前に母が亡くなってしまうと、母は自分で相続税の申告書を提出することができなくなります。
そこで、母の相続人である子どもが母の代わりに相続税の申告を行うこととなるのです。

この場合、母が亡くなった日の翌日から10ヶ月以内に、父の相続税の申告・納付を行うこととなります。

法定相続人以外の人に遺贈があった場合

法定相続人以外の人は、自身が財産を引き継ぐことになるとは予想していない状態にあります。

そのため、被相続人が亡くなっても、自身は何も関係ないと思っているのです。
しかし遺言書が発見され、そこに財産を遺贈すると書かれていることで、初めて財産をもらう立場にあると知ることになります。

したがって、遺贈により財産を得ることとなった人は、その遺言書が発見された日の翌日から10ヶ月が申告・納付期限となります。

相続人が廃除された場合

法定相続人であっても著しい非行により相続人にふさわしくないと判断されると、相続人の地位を失うことがあります。
このことを、相続人の廃除といいます。

相続人の廃除が行われると、その人は法定相続人ではなくなりますが、その子どもなどが代わりの相続人となります。
そのため、新たに相続人となった人は、その事実を知った日から10か月後が申告・納付の期限となるのです。

その他やむを得ない事情がある場合

「遺留分の侵害額請求があった場合」や「相続人である胎児が生まれた場合」は、通常の相続より遺産分割協議に時間がかかります。
そのため、通常より2ヶ月の申告・納税の延長が例外的に認められます。

また、自然災害などが発生した場合は、法定の期限内に申告・納付するのが困難な場合があります。
このような場合は災害が発生した後に、国税庁が柔軟な対応を行うことを公表し、期限が延長されることがあるのです。

次の記事では、相続税の申告が期限に間に合わない主な理由について紹介していきます。