相続税評価額② 建物・株式・生命保険・退職手当金の相続税評価額計算方法

直政です。

前回の記事では土地の相続税評価額計算方法について解説をしました。
今回は、建物・株式・生命保険・退職手当金の相続税評価額計算方法を見ていきたいと思います。

建物の相続税評価額計算方法

相続財産としての建物には自宅家屋や賃貸物件などがあり、いずれも固定資産税評価額を基準として相続税評価額を計算します。

自宅の相続税評価額

被相続人が住んでいた家(自用家屋)の場合、相続税評価額は以下のように計算します。

自用家屋の相続税評価額:固定資産税評価額×1.0

つまり固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になるので、市町村から送付される固定資産税課税明細書で確認できます。

貸家の相続税評価額

家屋を貸家として使っている場合には、「借家権割合」を反映させて相続税評価額を計算します。

貸家の相続税評価額:固定資産税評価額×(1-借家権割合)

借家権割合は全国一律30%であり、固定資産税評価額2,000万円の貸家であれば、以下のような相続税評価額になります。

2,000万円×(1-0.3)=1,400万円

賃貸物件の相続税評価額

賃貸アパートやマンションには借家権割合に加え、賃貸割合も反映させて相続税評価額を計算します。

賃貸物件の相続税評価額:固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

賃貸割合は入居率と異なり、貸している部分の床面積割合で計算します。
たとえば総床面積が400㎡、貸している部屋の面積合計が300㎡だった場合、賃貸割合は以下のようになります。

賃貸割合:300㎡÷400㎡=0.75(75%)

固定資産税評価額が5,000万円、賃貸割合が75%の場合、相続税評価額は以下のようになります。

5,000万円×(1-0.3×0.75)=3,875万円

株式の相続税評価額計算方法

株式には上場株式、非上場株式の2種類があり、それぞれ評価方法も異なります。
ただし、非上場株式の評価はかなり複雑なため、最初から専門家へ任せた方がよいでしょう。

上場株式の相続税評価額

上場株式の場合、以下の4つの中からもっとも低い金額(株価)を相続税評価額とします。

  • 相続開始日の終値
  • 相続発生月の毎日の終値の平均値
  • 相続発生月の前月の毎日の終値の平均値
  • 相続発生月の前々月の毎日の終値の平均値

基本的には相続開始日の終値で評価しますが、相続開始日に株価が高騰する可能性もあるため、不利な税負担にならないよう、上記4つから選択可能になっています。

非上場株式の相続税評価額

非上場株式には以下のような相続税評価額の計算方法があります。

  • 原則的評価方式
  • 配当還元方式

一般的には原則的評価方式が使われており、会社規模によって「類似業種比準方式」「純資産価額方式」「併用方式」のいずれかを採用します。
持ち株数が少なく、会社経営に関与していない場合は配当還元方式によって相続税評価額を計算します。

いずれも発行会社の決算情報などが必要であり、どの計算方法を使うかで株価も変わってくるため、非上場株式の評価は税理士への依頼をおすすめします。

生命保険金の相続税評価額計算方法

生命保険の場合、契約形態によって相続税評価額の考え方が変わるので、誰が被保険者や保険料負担者なのかをよく確認してください。

死亡保険金の相続税評価額

死亡保険金は相続税の課税対象ですが、以下の非課税枠を差し引いた部分が相続税評価額(課税対象)になります。

生命保険の非課税枠:500万円×法定相続人の数

生命保険契約に関する相続税評価額

保険料負担者が夫、被保険者が妻であり、夫が亡くなった場合は保険事故が発生していません。
被保険者の妻が生きているため死亡保険金の支払いはありませんが、解約返戻金相当額を相続税評価額とし、夫の相続財産に含めることになります。

退職手当金の相続税評価額計算方法

退職手当金にも非課税枠があり、以下の金額を差し引いた部分が相続税評価額になります。

退職手当金の非課税枠:500万円×法定相続人の数

ただし、本人の死後3年以内に受け取った場合は相続税の課税対象になりますが、3年経過後に遺族が受け取った場合は所得税の対象になります。

相続税評価額の計算は重要であり、評価額がわからないまま遺言書を作成した場合、遺産配分に不平等が出てしまいます。

相続人全員による遺産分割協議の際も、相続税評価額がわからなければ、どのように分割してよいか迷ってしまうでしょう。

相続税対策が必要かどうか判断するためにも、相続税評価額の計算方法はぜひ覚えておいてください。
ただし、不動産の場合は専門家でなければ見抜けない減額要素があり、非上場株式など税務や会計の知識がなければ評価できない財産もあります。

評価の難しい財産、判断に迷う財産があれば、なるべく早めに相続の専門家へ相談しましょう。