【相続手続き】時系列ごとの手順の流れ・期限③

直政です。

これまで相続に関する手続きの流れや期限について解説してきました。

今回はこの最後の記事になります。
相続手続きを専門家に依頼する際の注意点や、専門家の選び方についてもご紹介していきます。

相続手続きで10か月以内に行う手続き

相続手続きで10か月以内に行う相続手続きは、相続税の申告や遺産に応じた手続きなどです。

遺産に応じた相続手続きをする

遺産の種類に応じた相続手続きを行います。

遺産が不動産の場合は法務局で相続登記により被相続人から相続人に名義変更します。預金は口座のある金融機関で手続きするという流れです。

相続登記や預金の相続手続きなどには期限はありません。しかし、時間が経過するとさらに相続が発生して手続きが困難になる可能性があるため、早めに相続手続きを済ませておきましょう。

なお、相続不動産を売却する場合は相続登記が終わっていることが前提です。相続不動産を売却する予定の場合は、売却スケジュールも考えて相続登記を進める必要があります。

相続税の申告や納付を行う

相続税の申告・納付には、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内という期限があります。

相続税の申告は必ず必要なわけではなく、相続税がかかるケースや特例などを利用するケースに行う必要があるものです。

相続税の申告・納付が必要かどうかは税理士などの専門家に相談することをおすすめします。申告に必要な書類は、相続ケースや遺産の内容によっても異なります。あわせて専門家に確認しておくとスムーズです。

相続税は基本的に現金一括払いです。ただ、2020年1月4日時点ではクレジットカード払いなども利用可能です。また、相続税の納付が難しい場合は分割払いができる延納制度や、物で納める物納制度があります。

相続税の納付が困難な場合は専門家や税務署などに相談のうえで必要な手続きを行いましょう。

参考までに、相続税は申告期限から5年以内であれば、払い過ぎた相続税の更生請求も可能です。

相続手続きで1~5年以内に行う手続き

相続手続きで1~5年以内に行う相続手続きは次の5つです。

遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)

遺留分とは配偶者や子供、被相続人の直系尊属などに認められた遺産の最低限の取り分のことです。

被相続人と一定の関係にある相続人は、被相続人と生計を共にしている可能性が高いと考えられます。たとえば被相続人の相続人が同居している子供と配偶者だった場合などがこれにあたります。

遺産は遺された家族の生活の糧という側面もあり、生計を共にしていた相続人がいる場合に、被相続人が遺産を他の人にあげてしまうと、子供や配偶者が生活に困窮してしまいます。これを回避するための制度が遺留分減殺請求です。

遺留分の侵害があった場合は、他の相続人などに「遺留分(最低限の遺産の取り分)を渡して欲しい」と遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)することが認められています。

遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)の期限は相続があったことを知ってから1年です。また、相続から10年で遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)はできなくなってしまいます。

葬祭費・埋葬料を請求する

国民健康保険など各健康保険には、埋葬料や葬祭費の支給制度があります。各保険に請求することで5万円前後の葬祭費や埋葬料を受け取ることが可能なのです。

国民年金の加入していた場合は自治体の国民年金の管轄窓口が、健康保険に加入していた場合は全国健康保険協会が窓口です。

埋葬料や葬儀費を請求できるのは被相続人の死から2年です。

被相続人の生命保険金の請求

被相続人の生命保険金の請求も行います。

保険契約者や保険金の受取人が保険会社に連絡し、請求書類に記載をして保険会社に返送、保険会社側で生命保険金支払いについて判断してから保険金の支払いという流れです。

生命保険金の請求には死亡診断書や保険証券などが必要になります。保険会社の担当を把握している場合は、先に担当へ確認しておくと手続きがスムーズです。

高額医療費の還付請求

被相続人の医療費が高額になり高額医療費制度により還付を受けられる場合は、還付申請が可能です。

高額医療費の還付申請期限は2年です。
なお、相続人が相続放棄をしている場合は高額医療費の還付は受けられませんので注意してください。

遺族年金の受給申請手続き

遺族年金とは、国民年金または厚生年金に加入していた被相続人の遺族が受給できる年金のことです。
厚生年金の加入者は基本的に会社が、国民年金の場合は自治体や年金事務所が窓口です。

年金によって必要書類や窓口が変わりますので、あらかじめ手続きを管轄する窓口や必要書類について確認しておくとスムーズです。
遺族年金の受給申請の期限は被相続人の死から5年です。

相続手続きを専門家に依頼する場合の注意点と選び方について

ここまでの相続手続きでご紹介した手続きは、じっくりと調べれば相続人が自分でできるものもあります。しかしながら、相続手続きは弁護士などの専門家に依頼するケースが少なくありません。

相続手続きは法的な深い知識を要する他、期限まで手続きを終えるためには段取りを考えてスムーズに動かなければいけません。専門知識と実務経験を要するため、専門家へ依頼することを選ぶ方が多いのです。

次に、専門家を選ぶときのポイントと注意点を紹介します。

専門家は相続ケースや依頼したい内容に合わせて選ぶ

相続手続きを依頼する専門家は、手続きの内容に合わせて選ぶことがポイントです。
相続税の手続きをお願いしたい場合は税理士、相続の遺産分割で揉めている場合は弁護士など、相続ケースに合わせて選ぶこともポイントになります。

専門家を選ぶときは専門性を確認することが注意点

専門家を選ぶときは、その専門家の専門性を確認することが注意点になります。

弁護士にも専門分野があり、離婚問題を得意としている弁護士もいれば、刑事事件を得意としている弁護士もいます。

相続手続きを依頼する場合は相続問題を専門にした、実績のある弁護士を選ぶことが大事です。専門分野が異なると相続手続きに慣れておらず、スムーズに進まない可能性があるからです。

まとめ

紹介した相続手続きを見ると、自分でも相続手続きは簡単にこなせると思うかもしれません。
しかし、相続手続きは法律や税金の深い知識や実務経験がないとスムーズに進めることが困難です

相続人が自分で相続手続きをやろうと挑戦しても、期限に間に合わなかったり、書類の準備がうまくいかずに挫折することも少なくありません。

相続手続きをスムーズにこなすためにも、弁護士などの専門家を頼ってはいかがでしょう。
専門家はどの順番で相続手続きを進めればよいか熟知していますので、スムーズに相続手続きを進められます。

まずは弁護士などの専門家に相談してみてください。