遺産相続には所得税や住民税はかからない!

直政です。

遺産を相続した方は、財産を得たことで、所得税の確定申告をする必要があるかどうか悩まれると思います。

今回の記事では、遺産を引き継いだ時にかかる税金について解説をしていきます。

所得税や住民税に関わる確定申告が必要な場合とはどんなときなのかをしっかり掴んでいきましょう。

遺産相続は翌年の所得税や住民税に影響しない

遺産相続をした相続人の方は、受け取った財産に関して所得税や住民税かかるのではないかと心配になってしまうかもしれません。

しかし、遺産相続をして財産が増えた場合でも翌年の所得税や住民税に影響はありません

遺産相続で承継された財産は相続税の対象になるため、所得税や住民税に関しては非課税扱いとなるのです。

所得税法9条で課税所得から除外されているものの中に相続で取得した財産についてしっかりと記載されています。

十六 相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの(相続税法(昭和25年法律第73号)の規定により相続、遺贈又は個人からの贈与により取得したものとみなされるものを含む。)
引用:所得税法第9条16(e-Gov法令検索)

相続で得た財産というのは、勤労、事業で得た収入ではないので、所得税を納める必要がないということですね。

遺産相続でかかる税金は相続税

遺産を相続したうえで、遺産総額がある定められた金額以上であった場合は、相続税が課税されます。

相続時に申告が必要な税金は、基本的に相続税だけです。

相続税が課税されたときに所得税や住民税が二重で課税されることがないような仕組みになっています。

相続税はすべての人に課税されるわけではありませんが、納税の必要があるかどうかは気に留めておきましょう。

収入を生む資産を相続したときは確定申告が必要

相続人がアパートや駐車場などを相続し、その不動産を賃貸することで収入を得た場合、所得税が発生することがあります。

この場合、厳密にいうと相続時に税金が発生するわけではありませんから、相続でかかる税金ではありませんが、将来的に自分の収入になるということに注意しておいてください。

収入を生む遺産を相続した場合は、後々、受け取った収益に対して確定申告をする必要があるということです。

相続人自身の確定申告は特別な期日は設けられていませんから、通常通り翌年の3月15日までに行えば問題ありません。

普通の所得と同じように考えてもらえば大丈夫です。

また、被相続人の事業を引き継いだ場合は手続き面でも注意を払っておきましょう。

例えば被相続人の個人事業において青色申告をしていたときは、事業を承継した相続人も青色申告の届を提出することで税制優遇を受けることができます。

死亡退職金は所得税の対象にならない

会社に勤めている方が、退職前に亡くなってしまった場合、死亡退職金というものが支給されます。

この死亡退職金というのは被相続人が亡くなった時点で保有している財産ではないので、遺産分割の対象となる相続財産ではありません。

しかし、生命保険金と同じく相続税の対象となる「みなし相続財産」です。

退職金とはそもそも、定年退職や自己都合で退職した際にその従業員や役員に対して支払われるため、当然所得税の対象となります。

しかし、死亡退職金の場合、その従業員や役員に支払われるわけではなく、遺族に対して支払いがされますよね。

そのため、死亡後3年以内に遺族に対して支払われる死亡退職金は所得税の対象からは外されるのです。

ただし、相続税の対象にはなりますので注意して下さい。

退職手当金等を相続人が受け取った場合にも、非課税枠である「法定相続人×500万円」を使うことができます。

遺産相続の代償金も所得税の対象にならない

遺産分割の際、代償分割という方法をとる場合があります。

代償分割とは、共同相続人のうち一人又は数人が相続財産を現物で取得し、その現物を取得した人が、他の共同相続人に対して、代償金を支払うことで清算する方法のことです。

例えば、姉妹で遺産を相続する際に、姉は8,000万円の土地、妹は預貯金4,000万円を相続したとします。

しかし、法定相続分は2分の1ずつですから、これでは均等ではありません。

この場合、姉が土地を売却して均等に分けることもできますが、現物で取得したい場合は、姉が妹に2,000万円の代償金を支払い調整するという方法があります。

これが代償分割という相続手続です。

この代償金に関しては、現金で支払うのであれば所得税はかかりません

ただし、ここで注意してほしいのは、代償金を金銭以外で支払った場合です。

代償金というのは金銭以外でも支払いが可能です。

例えば、自分がもともと持っている不動産で代償金を支払う場合、譲渡所得税が課せられることがあります。

【補足】被相続人の所得税と住民税は相続人が支払う

もし亡くなった方に一定の所得があった場合、相続人は被相続人の代わりに確定申告をして、所得税や住民税を納める必要があります。

この確定申告のことを準確定申告といいます。

準確定申告は相続人が行う

準確定申告では、被相続人が亡くなった年の1月1日から亡くなった日までに得た所得を計算して、申告をします。

申告は相続人が行うことになっています。

相続人が複数いる場合は、代表者が行うことが多いですが、申告が終わったら、他の相続人に内容を通知しなければなりません。

申告の期間は亡くなった日から4か月以内で、とても短く設定されています。

この期日を過ぎると、加算税が課せられてしまうので十分注意して下さい。

住民税の納税も忘れずに

所得税は亡くなった年に得た所得に対して課せられるのに対し、住民税は亡くなった日の属する年の所得には課税されません。

しかし、被相続人に未納の税金がある場合はその納税義務を相続人が引き継がなくてはいけません。

納付書などを確認して、未納分がないかどうか調査し、支払いの済んでいない住民税がある場合は、忘れずに納税しましょう。

また住民税の場合、被相続人の亡くなった時期によっては金額が確定していないことがあります。

その時は、金額が確定してから納税することになります。

準確定申告をしなくてもよいケース

準確定申告はすべての人がしなくてはいけないものではありません。

亡くなった人の年金収入が400万円以下でさらに年金以外の所得が20万円以下である場合には申告をする必要はありません。

もし、相続税がかかってしまうほどの財産がある場合は、準確定申告が必要になるケースが多いので、注意しておきましょう。