2010年、ユーキャン新語・流行語大賞に「終活」という言葉がノミネートされました。
自分が死んだときのために何をしておくべきなのかを考え、そのために前もって準備しておく。
そういった「終活」を若い頃から行うのが、当たり前の世の中となってきています。
それでは、おじいちゃん・おばあちゃんは今からどのような相続対策を行っていけばいいのか?
最も確実な方法は、遺言書というかたちで家族への想いを残しておくことです。
それが最善の相続対策となります。
相続とは、故人の財産などの権利義務を受け継ぐことです。
言い換えれば、お金の問題になります。
うちの子供たちは仲もよく、お金に困っているということもないので大丈夫だろう。
そう思われているかもしれません。
しかし、残念ながら多くの相続で家族間での争いが発生してしまうのです。
単に財産の少ない多いだけではなく、この不動産が欲しい、この債務は負担したくないという個々の思いがあります。
そういった思いがぶつかってしまい、裁判に発展しないまでも、残された家族間の仲が悪くなってしまう。
現実には、そういう事例が山のように存在するのです。
そのようなことを避けるために、生前におじいちゃん・おばあちゃんの想いを遺言書として残しておくことが大切になります。
では、どのように準備を進めていけばいいのか。
以下、ご説明していきます。
1.財産を整理する
相続対策の第一歩として、現金、預金、不動産、有価証券、車、保険など、どのような財産がいくらあるのかをまとめておきましょう。
併せて、債務などのマイナスの財産についても、しっかりまとめておいてください。
債務については忘れがちですが、債務も負の財産として相続の対象となるので、気を付けてください。
普段から財産管理を徹底していれば不要な作業ですが、こういったことを普段からされている人は少ないです。
一度まとめておけば、そのあともずっと更新しながら使い続けることができますので、是非財産整理をしておいてください。
2.誰にどの財産を残すのかを決める
遺言書を作成する中で、最も重要な作業となります。
遺言書がない場合は、法定相続分という民法で規定された割合で相続します。
例えば、配偶者と子が二人であれば、配偶者2分の1、子4分の1、子4分の1というかたちです。
しかし、当然ではありますが必ずといっていいほど、残された家族間で話し合いが行われます。
その際に、家族全員が
「法定相続分で分ければいいよね。」
「異議なし。」
とはなりません。
「長男だし、一緒に住んでいたのは俺なんだから、実家の不動産は俺がもらうのが筋だ。」
「お兄ちゃんは一緒に住んではいたけど、その分たくさんお金を使わせたでしょ。」
悲しいことに、このような言い争いになることが多いのです。
そこで、故人の想いが重要になってくるのです。
「長男には確かに迷惑をかけられたけども、家業を引き継いで立派にやってくれたから実家は長男に残してやりたい。」
「長女は、毎週実家にきて身の回りの世話などをしてくれたから、現金を多めに渡してやりたい。」
そのような想いを持って、誰に何を残すのかを決めることで、その想いが家族に伝わるのです。
そして、結果として円満な相続に繋がっていきます。
3.想いを遺言書に記す
上記のような想いのもと、財産を分けてそれを遺言書にしたとしても、想いが伝わらなければ意味がありません。
そこで、遺言書にその想いをしっかりと記しておくのです。
遺言書には、財産を誰にということだけを書くと考えている人が多いですが、そんなことはありません。
遺言書という名の通り、家族への想いを遺言というかたちで残すことができるのです。
付言事項といいます。
例えば、父親が長男に対し、
「息子よ。お前には本当に心配をかけられた。
浪人までして入った大学を1年で辞めて、働き始めた会社も長続きせず、しばらく自堕落な人生を送っていたな。
そんなお前が、家業を継いでくれた時は本当にうれしかった。
最初はぶつかることも多かったが、お前のおかげでなんとか持ち直し、今は100人の従業員を雇う大きな会社となった。
今思えば、これまで礼を言ったことがなかったな。ありがとう。
親らしいことは何もしてやれなかったから、大した家ではないが今住んでいる建物と土地はお前にやりたいと思っている。
その代わり、現金については妹に全て渡してやってくれ。
それから、母さんももう年だ。
最後まで迷惑をかけるが、母さんのことをよろしく頼む。」
と遺言書に残す。
ちょっとクサすぎますかね。
しかし、こういった言葉を遺言書に記すことも可能なのです。
遺言書にこのようなことが書いてあったら、残された家族はどう思うでしょう。
父はそんなことを思っていたのか、最後まで母のことを心配してるんだな、父の遺志を尊重してあげよう、そう思うのではないでしょうか。
仮にそう思わなかったとしても、故人がどのような想いを持っており、どのような想いのもと財産を分けたのか、それが残された家族に伝わることが大切なのです。
単に、「結果として財産をこう分けました、これが私の考えです。」では伝わりません。
恥ずかしいかもしれませんが、遺言書は死後読まれるものです。
正直な気持ちを、遺言というかたちで、最後の言葉として家族に伝えてあげましょう。
4.遺言書を作成する
ここまでくれば、遺言書は完成したも同然です。
あとは、どのようなかたちで遺言書を作成するかです。
まず、最もポピュラーな方法である「自筆証書遺言」という方法があります。
簡単に言えば、手書きで遺言書を作成することです。
ワープロなどで作成することは認められていません。
ただ、財産目録、財産を一覧にしたものはワープロで作成することが認められています。
いつでもどこでも簡単に作成できるというのが、この方法のいいところです。
次に、最も確実な方法である「公正証書遺言」です。
公証役場で公証人によって作成されるもので、確実に有効な遺言書を作成できます。
手数料が数万円かかってしまいますが、確実な上に死後の手続きが円滑に進めることができるのが特徴です。
最後に、「秘密証書遺言」です。
公証役場で作成するところは、「公正証書遺言」と変わりませんが、「秘密証書遺言」の場合は遺言の内容について本人しか知りえません。
死ぬまで誰にも内容を知られたくないという場合に選択する方法ですが、実際に使用される人は少ない方法となります。
どの方法を選択するかは自由ですが、私としては想いを伝えられる上に、確実に有効な遺言書を作成できる「公正証書遺言」がおすすめです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「終活」が当たり前になった世の中で、これから何ができるのかという不安があるかと思います。
しかし、上記の方法でおじいちゃん・おばあちゃんの想いを遺言書というかたちで残すことができれば、これからでも十分な相続対策をすることができます。
①財産を整理する
②誰にどの財産を残すのかを決める
③想いを遺言書に記す
④遺言書を作成する
この4つのステップを踏んで、ご自身の想いをご家族に残してあげてください。