おしどり贈与ってなに?

「相続税対策としておしどり贈与が有効だって聞いたけど、おしどり贈与ってなに?」

「おしどり贈与って、本当に相続税対策になるの?」

こんにちは、直政です。

おしどり夫婦。

雄と雌が常に一緒にいる鴛鴦(おしどり)のごとく、仲睦まじい夫婦のことをそのように呼びますね。

おしどり夫婦は、一定の条件を満たすと税金の面で優遇される制度があるのです。

それが「おしどり贈与」です。

「おしどり贈与」って言われても、想像できませんよね?

本日は、「おしどり贈与」の内容や要件、本当にお得なのかについて簡単にお伝えさせていただきます。

1.「おしどり贈与」とは

まず、「おしどり贈与」とは贈与税の配偶者控除のことです。

2000万円までは、非課税で贈与できます。

贈与税というのは、高いのです。

110万円の基礎控除を控除した後の金額が、仮に3000万円だとしたら50%、3000万円を超えたら55%です。

ちなみに、相続税であれば3000万円で15%です。全然違いますよね。

それでは、いったいどんな場合に控除が受けられるのでしょうか。

2.「おしどり贈与」の要件

おしどり贈与に必要な要件は、相続税法21条に明記されています。

①婚姻期間が20年以上の夫婦間の贈与であること

②贈与する財産は居住用の不動産であること、又は居住用不動産を取得するためのお金であること

③贈与された翌年3月15日までにその不動産に住んでおり、その後も住み続ける見込みがあること

④同じ夫婦間で初めておしどり贈与をすること

そもそも、長い間夫婦2人で築き上げてきた財産を夫婦間で贈与するのに、なんで高い税金を取られなくちゃいけないの?というのがスタートです。

なので、上記のような要件となっているのです。

対象となる不動産についても、しっかりと要件が定められています。

①不動産が日本国内にあること

②贈与された配偶者の居住用の不動産であること

全ての要件を満たしていれば、申告をすることで「おしどり贈与」の控除を受けることが可能となります。

しかし、「おしどり贈与」の控除を利用することは本当にお得なのでしょうか。

3.「おしどり贈与」のメリットは少ない

贈与税が2000万円までは非課税ときくと、メリットがあるように感じてしまうかもしれません。

しかし、必ずしもメリットがあるわけではないのです。

以下、まずはデメリットについてご説明いたします。

①不動産取得税と登記の際の登録免許税がかかる

不動産を取得した場合、税金がかかります。

「おしどり贈与」で控除を受けられても、不動産取得税は支払わなければなりません。

しかし、相続の場合はかからないのです。

また、登記をする際には登録免許税がかかりますが、この登録免許税についても相続のほうが安く済むのです。

専門家に依頼すれば、その分の報酬も当然かかります。

②贈与された配偶者が先に亡くなると意味がない

相続人が配偶者しかいない場合、もし亡くなってしまうと贈与した不動産がそのまま自分に返ってくることになります。

不動産取得税や登録免許税、代理人報酬を支払って贈与したのに、結局自分のところに戻ってきてしまっては、意味がなくなってしまいます。

③配偶者には相続の税額軽減がある

配偶者には、そもそも最低1億6000万円までは相続税がかかりません。

なので、わざわざ「おしどり贈与」を使ってまで節税対策をするメリットは、かなり限定的になっているのです。

私の金銭感覚ですと、1億6000万円を超える場合というのはそうそうない気がしますが、いかがでしょう?

以上がデメリットです。

ではメリットがないかというと、当然そんなことはありません。

以下、メリットについてご説明します。

①3年以内の贈与でも相続税の課税対象にならない

本来であれば、亡くなる3年以内の贈与は相続税の計算上、相続財産に足し戻されます。

しかし、「おしどり贈与」に関しては例外となっており、亡くなる直前に行ったとしても相続財産に足し戻されることはありません。

②財産自体を減らすことができる

例えば、夫の財産額が大きい場合に「おしどり贈与」を行えば、夫の財産額そのものを減らすことができます。

その分、相続税も安くなります。

③配偶者に優先的に財産を残すことができる

「おしどり贈与」を行えば相続財産には含まれませんので、後々遺産分割のときに揉めてしまい、配偶者が居住している不動産を売らなくてはならないという事態を避けることができます。

ただし、相続法が改正されて「配偶者居住権」というものができました。

「おしどり贈与」をしなくても、配偶者がそのまま自宅に住み続けることができるようになりましたので、そういみ意味では効果が薄くなりました。

以上、簡単にメリットとデメリットについてご説明しました。

まとめ

結論としては、「おしどり贈与」が効果的なケースはかなり限定的である、ということになります。

相続税の対策としては、そもそも配偶者には1億6000万円の税額軽減があります。

自宅に住み続けたいという希望も、法律の改正によって可能となりました。

では、「おしどり贈与」に存在価値はないのでしょうか。

そんなことはありません。

結局は、目的が大切なのです。何のために「おしどり贈与」をするのか。

節税のため、配偶者を自宅に住み続けさせたいため、そういった目的ですと確かに「おしどり贈与」の利用価値は低いかもしれません。

しかし、私はここでも「想い」が大事だと考えています。

長年連れ添った配偶者に何か残してあげたい、安心させたい、そういった「想い」を残すという意味では、「おしどり贈与」も有効だと思います。