生前にできる相続対策として生命保険は有効ですか?

こんにちは。直政です。

「生前にできる相続対策として生命保険は有効ですか?」というご質問をいただきましたので、回答いたします。

有効です!

先に結論からお答えしてしまいましたが、生命保険は相続対策として有効です。

では、どのように有効なのか。

以下、ご説明いたします。

1.現金として活用できる

大前提として、生命保険の死亡保険金は原則として相続財産には含まれません。

なので、受取人の固有の財産となり、自由に使うことができます。

また、相続財産ではないので相続放棄をしても保険金は受け取ることができます。

①当面の費用として活用する

知っている方もいると思いますが、銀行などが死亡の事実を知ると、口座が凍結されます。

凍結されると、当然ですが現金は一切下すことができなくなります。

現在は、相続法の改正により預貯金額の一部だけは単独で下せるようになりましたが、改正前は遺産分割が終わるまでは1円も下せなかったのです。

銀行には死亡の事実を伝えずに、お金をすべて下ろしてから伝える、なんてことも多く行われていましたね。

お亡くなりになったあとは、生活費はもちろん、葬儀の費用、入院していた時の費用など、諸々お金が必要になります。

そういったときに、保険金があると大変助かることは間違いないでしょう。

②納税資金として活用する

相続財産にもよりますが、通常は財産が多ければ多いほど相続税も高くなります。

現金がたくさんあるのであれば、特に心配することはありません。

しかし、現金が少なく、自分でも用意できない場合は、不動産などを売却して納税資金を用意しなくてはならなくなるかもしれません。

そんなときにも、保険金を活用することができます。

③代償分割に活用する

聞きなれない言葉かと思いますが、代償分割とは遺産分割の方法の一種です。

遺産分割には、他に現物分割、換価分割、共有分割があります。

現物分割・・・不動産は配偶者、現金は子、というようにそのまま分ける方法
換価分割・・・すべての財産を現金化して分ける方法
共有分割・・・不動産を配偶者2分の1、子2分の1というように分ける方法

現物分割は楽な方法ですが、分けるのが非常に難しいです。

換価分割は最もシンプルで分かりやすいですが、不動産なども現金化するので居住用の不動産などが残せなくなってしまいます。

共有分割は、不動産を共有する状態になるので、売却の時などに面倒になります。

代償分割の例としては、例えば不動産しか財産がない場合。

配偶者と子の2人の相続人がいて、配偶者が不動産の全てを相続する代わりに、子には現金を支払ってあげるという方法ですね。

不動産の価値が5000万円であれば、2500万円を子に支払わなくてはなりません。

こういった場合も、保険金を活用することができます。

ただし、上記のケースでは子が保険金を受け取っても意味がないので、受取人の指定には気を付けてください。

注意点としては、大前提として、生命保険は原則として相続財産には含まれないとお伝えしました。

原則として、です。

絶対ではないことを覚えておいてください。

相続人が5人いて、相続財産が全くない場合に、1人だけが保険金を1億円もらったら、どう考えても不公平です。

その場合は、「持ち戻し」といって相続財産に組み込まれる可能性があります。

相続財産全体や相続人の数など、総合的に考えて保険をかけないと、せっかくの相続対策も効果がなくなってしまいます。

2.相続税を節税できる

まず、相続税について簡単にご説明しておきます。

相続税には、基礎控除といって課税されない枠があります。

基礎控除額は、3000万円+法定相続人の数×600万円です。

例えば、相続人が3人であれば3000万円+3人×600万円なので、4800万円までは課税されません。

生命保険にも同じように非課税となる金額が決まっているのです。

保険金は原則として相続財産には含まれませんが、相続税の対象にはなります。

対象にはなりますが、保険金全てに課税されるわけではなく、法定相続人の数×500万円までは非課税です。

簡単な例ですと、相続人が3人の場合、1500万円までは非課税となるわけですから、1500万円の保険に加入していれば相続税がかからないということになります。

また、1500万円の保険料の支払いをするということになるので、その分財産自体が減ることになります。

つまり、財産が減ることでそこに課税される相続税も減らせるということですね。

これを利用して、相続税の節税対策をすることができるのです。

注意点としては、相続放棄をした場合は保険金を受け取ることはできますが、上記の生命保険金の非課税について適用を受けることはできません。

また、相続税の節税については生命保険以外にも不動産や養子縁組、生前贈与など色々な対策があります。

節税についても、総合的に考える必要がありますので、迷ったら専門家に相談してください。

まとめ

①現金として活用する。

②相続税の節税ができる。

生命保険の相続対策としては、この2点が最も大きい部分かと思います。

あとは、『想続』を大切にしている私としては、保険金を想いとして残す方法も選択肢の1つとして考えていただきたいです。

保険金は相続財産には含まれないので、特定の人にそのまま残すことができます。

他の相続人の干渉を受けることがないので、想いがあって間違いなくこの人には残したいとお考えであれば、生命保険を活用してその想いを紡いでいただければと思います。